春なればうべも咲きたる梅の花
君を思ふと夜寐も寝なくに
- 歌の意味
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春だから、なるほど咲いたのだなあ、梅の花よ。私はあなたを思って、夜も眠れないのに。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 831
詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
春になったからこそ梅は咲いたのだろうが、自分は君を思って夜も眠れないと詠む一首である。梅を恋人に見立て、咲くのを待ちこがれて眠れなかった思いを恋歌の形で表し、梅への愛着をたたえている。
天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「壱岐守板氏安麻呂」とある。
作者の板持安麻呂は、この時壱岐守の任にあった官人である。板氏を板持氏とするのは通説による。
初句「春なれば」は、春であるから、の意で、梅の咲く理由を示す。
二句「うべも咲きたる」の「うべ」は、なるほど、もっともだと納得する意を表す。
三句「梅の花」は、梅そのものに呼びかけるように置かれる。
四句「君を思ふと」の「君」は、梅を恋人に見立てたものとも、宴の主人を指すともとれる。
結句「夜寐も寝なくに」の「寐」は眠りのことで、「なくに」は…ないのにという逆接の詠嘆である。恋歌の類型を用いて、梅への思いの深さを表して結ぶ。
い:眠り。「寐を寝」で眠る意となる
- 作者
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板持安麻呂
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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万代に年は来経とも梅の花 絶ゆることなく咲きわたるべし
- 次の歌
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梅の花折りてかざせる諸人は 今日の間は楽しくあるべし