春さらば逢はむと思ひし梅の花
今日の遊びに相見つるかも
- 歌の意味
-
春になったら逢おうと思っていた梅の花に、今日の宴で逢うことができたことよ。
- 鑑賞
-
巻第五 雑歌 835
詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
春になったら逢おうと待ちわびていた梅の花に、今日の宴で逢えたと喜ぶ一首である。梅を恋人のように扱い、待ち望んだ再会がかなった喜びを素直に表している。
天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「薬師高氏義通」とある。高氏を高丘、高橋などのいずれとするかは定まらない。
作者の高氏義通は、大宰府の医師の任にあった官人である。
初句「春さらば」は、春になったならば、の意である。
二句「逢はむと思ひし」は、逢おうと思っていた、の意で、梅を恋人に見立てる。
三句「梅の花」は、待ちわびた相手として置かれる。
四句「今日の遊びに」の「遊び」は宴や管弦の楽しみをいう。
結句「相見つるかも」は、互いに見ることができた、逢えたの意で、「かも」は詠嘆である。次歌の第八百三十六首の「今日にしありけり」とともに、今日という日への喜びを表す。
あそび:宴会や詩歌管弦の楽しみ
あひみる:互いに会う、対面する
- 作者
-
高氏義通
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
梅の花今盛りなり百鳥の 声の恋しき春来るらし
- 次の歌
-
梅の花手折りかざして遊べども 飽き足らぬ日は今日にしありけり