春の野に霧立ちわたり降る雪と
人の見るまで梅の花散る
- 歌の意味
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春の野に霧が一面に立ちこめ、降る雪かと人が見まがうほどに、梅の花が散っている。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 839
詞書は前の歌に続き「梅花の歌三十二首 并せて序」
春の野に霧が立ちこめ、降る雪と人が見まがうほどに梅の花が散ると詠む一首である。主人旅人の第八百二十二首の雪の見立てを受け継ぎ、霧を加えて幻想的な春の景を描いている。
天平二年正月十三日、大宰帥大伴旅人の邸宅に大宰府の官人や九州諸国の国司らが集い、庭の梅を題に詠み合った「梅花の宴」の歌三十二首の一首である。漢文の序は、初春の令月に気は良く風は和らぎ、梅は鏡の前の白粉のように白く開き、蘭は身に帯びた香のように薫ると記し、令和の元号の典拠となったことでも知られる。序は、中国の詩文に落梅の篇があるように、園の梅を題に短歌を詠もうと結ばれている。歌の末尾に「筑前目田氏真上」とある。
作者の田氏真上は、この時筑前国の目の任にあった官人である。
初句「春の野に」は、第八百三十七首の初句と同じ句で、野の広がりを示す。
二句「霧立ちわたり」は、霧が一面に立ちこめる意で、本巻の第七百九十九首の嘆きの霧とは異なり、春の景の美しさとして描かれる。
三句「降る雪と」は、散る花を雪に見立てる言葉で、第八百二十二首の見立てを受ける。
四句「人の見るまで」は、人が見まがうほどに、の意である。
結句「梅の花散る」は、第八百二十二首の二句と同じ語で、落花を終止形で言い切って結ぶ。
たちわたる:一面に立ちこめる
- 作者
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田氏真上
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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梅の花散り乱ひたる岡びには 鴬鳴くも春かたまけて
- 次の歌
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春柳かづらに折りし梅の花 誰れか浮かべし酒坏の上に