我が盛りいたくくたちぬ雲に飛ぶ
薬食むともまた変若めやも
- 歌の意味
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私の盛りの時はすっかり衰えてしまった。雲に飛ぶ仙薬を飲んだとしても、また若返ることがあろうか。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 847
詞書「員外、故郷を思ふ歌両首」
自分の盛りはすっかり過ぎてしまい、雲に飛ぶという仙薬を飲んでも若返ることはないだろうと嘆く一首である。神仙思想の仙薬を持ち出しながら、老いの避けがたさを認めている。
題詞の「員外」は、梅花の宴の三十二首の数に入らない歌の意で、故郷を思う歌二首が宴の歌に続けて置かれている。作者は記されていないが、大伴旅人の作とみるのが通説である。
作者の大伴旅人は、大納言大伴安麻呂の子で、大伴家持の父である。神亀年間の末に大宰帥として筑紫に下り、天平二年に大納言となって帰京し、翌年に没した。漢詩文や老荘思想に通じ、大宰府で山上憶良らと文雅の交わりを結び、その集まりは筑紫歌壇と呼ばれる。
初句「我が盛り」は、自分の人生の盛りの時をいう。
二句「いたくくたちぬ」の「くたつ」は盛りを過ぎて衰える意で、「ぬ」は完了である。ここで句が切れる二句切れである。
三句「雲に飛ぶ」は、飲めば雲に乗って天に飛べるという仙薬の効能をいう。次歌も同じ「雲に飛ぶ」で始まる。
四句「薬食むとも」は、その仙薬を飲んだとしても、の意である。
結句「また変若めやも」の「変若つ」は若返る意、「めやも」は反語で、若返ることなどあろうか、ないと結ぶ。
くたつ:盛りを過ぎて衰える
をつ:若返る、もとに戻る
はむ:食べる、飲む
- 作者
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大伴旅人(推定)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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霞立つ長き春日をかざせれど いやなつかしき梅の花かも
- 次の歌
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雲に飛ぶ薬食むよは都見ば いやしき我が身また変若ぬべし