遠つ人松浦の川に若鮎釣る
妹が手本を我れこそ巻かめ
- 歌の意味
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松浦の川で若鮎を釣るあなたの腕を、この私こそが枕にしたいものだ。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 857
詞書は前の歌に続き「蓬客等の更に贈る歌三首」
松浦川で若鮎を釣る娘子の腕を、ほかならぬ自分こそ枕にしたいと詠む一首である。蓬客の三首の結びとして、共寝を願う求婚の意をはっきりと表している。
題詞の「蓬客」は、蓬のようにさすらう旅人の意で、序の語り手である作者自身をへりくだっていう。
「松浦河に遊ぶ序」に始まる一連の一首である。序は、作者が松浦の県に出かけて玉島の淵のほとりを散策していると、魚を釣る娘子らに出会い、その美しさは仙女のようであったこと、娘子らは漁師の子で住む里も家もないと答えながら、偕老の契りを願ったことを記す。中国の神仙小説『遊仙窟』の趣向を取り入れた虚構の物語で、大伴旅人の作とみる説が有力だが、山上憶良の作とする説もある。
作者の大伴旅人は、大納言大伴安麻呂の子で、大伴家持の父である。神亀年間の末に大宰帥として筑紫に下り、天平二年に大納言となって帰京し、翌年に没した。漢詩文や老荘思想に通じ、大宰府で山上憶良らと文雅の交わりを結び、その集まりは筑紫歌壇と呼ばれる。
初句「遠つ人」は、遠くにいる人を待つ意から「松浦」にかかる枕詞である。
二句「松浦の川に」は、物語の舞台である松浦川をいう。
三句「若鮎釣る」は六音の字余りで、春の若い鮎を釣る娘子の姿を描く。
四句「妹が手本を」の「手本」は腕のことで、腕を枕にして共寝することをいう。
結句「我れこそ巻かめ」の「巻く」は枕にする意で、「こそ」は係助詞、「め」は已然形で結ぶ係り結びである。ほかの誰でもなく自分がと、求婚の意志を強めて結ぶ。
たもと:ここでは腕、肘から肩までの部分
まく:枕にする、共寝する
わかゆ:若い鮎
- 作者
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大伴旅人(推定)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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松浦なる玉島川に鮎釣ると 立たせる子らが家道知らずも
- 次の歌
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若鮎釣る松浦の川の川なみの 並にし思はば我れ恋ひめやも