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後れ居て長恋せずは御園生の
梅の花にもならましものを

歌の意味
あとに残されて長く恋い焦がれているよりは、いっそお庭の梅の花にでもなってしまいたいものを。
鑑賞
巻第五 雑歌 864

詞書「諸人の梅花の歌に和へ奉る一首」
 都に残されて長く恋い慕っているよりは、あなたの庭の梅の花になりたいと詠む一首である。梅花の宴の歌に都から和したもので、旅人を慕う思いを、宴の庭の梅になりたいという願いで表している。
 題詞の書簡には、吉田宜が大伴旅人から四月六日付の手紙を受け取り、封を開いて読み、心が晴れたことが記される。辺境の地で旅にあって昔を懐かしみ、年月の過ぎるのを惜しんで涙する旅人を慰め、長寿を祈る。また旅人から示された梅花の宴の歌と、松浦の玉島の仙女との贈答の歌を読んで感嘆したと述べ、青い海が地を隔て白雲が天を隔てる遠さを嘆きつつ、相撲部領使に託して返書を送るとある。
 作者の吉田宜は、百済系の渡来人の子孫とされ、もとは恵俊という僧であったが、朝廷の命で還俗して吉田連の姓を賜った。医術にすぐれ、のちに図書頭などをつとめた。

 初句「後れ居て」は、あとに残されて、の意で、旅人が筑紫にあり自分は都に残っている状況をいう。
 二句「長恋せずは」の「ずは」は、…するよりは、の意で、長く恋い続けるよりは、と比較する。
 三句「御園生の」は、あなたのお庭の、の意で、梅花の宴の開かれた旅人の庭を指す。
 四句「梅の花にも」は、せめて梅の花にでも、の意である。
 結句「ならましものを」は、反実仮想の「まし」を用いて、なれるものならなりたいのにと結ぶ。梅花の宴の第八百十九首と同じ下の句を用いて唱和している。

みそのふ:庭園、お庭。「御」は敬意を表す
作者
吉田宜
出典
万葉集
前の歌
松浦川玉島の浦に若鮎釣る 妹らを見らむ人の羨しさ
次の歌
君を待つ松浦の浦の娘子らは 常世の国の海人娘子かも