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君が行き日長くなりぬ奈良道なる
山斎の木立も神さびにけり

歌の意味
あなたが旅立ってから日数が長くなった。奈良にあるお庭の木立も、すっかり古びて神々しくなったことだ。
鑑賞
巻第五 雑歌 867

詞書は前の歌に続き「君を思ふこと未だ尽きず、重ねて題す二首」
 あなたが旅立って日数が重なり、奈良の邸宅の庭の木立も古びて神々しくなったと詠む一首である。主のいない庭の木々が年月を経たさまを通して、旅人の不在の長さを表している。初二句は、巻第二の第八十五首の磐姫皇后の歌と同じである。
 題詞に「君を思ふこと未だ尽きず、重ねて題す二首」とあり、書簡と二首の歌に続けて、なお尽きない思いを重ねて詠んだものである。左注に天平二年七月十日の日付がある。
 作者の吉田宜は、百済系の渡来人の子孫とされ、もとは恵俊という僧であったが、朝廷の命で還俗して吉田連の姓を賜った。医術にすぐれ、のちに図書頭などをつとめた。

 初句「君が行き」は、あなたの旅立ちをいう。巻第二の第八十五首と同じ句で始まる。
 二句「日長くなりぬ」の「日」は「け」と読み、日数をいう。ここで句が切れる二句切れである。
 三句「奈良道なる」は、奈良にある、の意で、都の旅人の邸宅の所在を示す。
 四句「山斎の木立も」の「山斎」は「しま」と読み、池や築山を設けた庭園をいう。
 結句「神さびにけり」の「神さぶ」は古びて神々しくなる意で、「けり」は詠嘆である。主のいない庭の木々に時の流れを見て結ぶ。

け:日数
しま:池や築山のある庭園
かむさぶ:古びて神々しくなる
作者
吉田宜
出典
万葉集
前の歌
はろはろに思ほゆるかも白雲の 千重に隔てる筑紫の国は
次の歌
松浦県佐用姫の子が領巾振りし 山の名のみや聞きつつ居らむ