遠つ人松浦佐用姫夫恋ひに
領巾振りしより負へる山の名
- 歌の意味
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松浦佐用姫が夫を恋い慕って領巾を振ったときから、この山はその名を負っているのだ。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 871
詞書「大伴佐提比古郎子、特に朝命を被り藩国に奉使す」
松浦佐用姫が夫を恋い慕って領巾を振ったときから、この山は領巾振りの名を負っていると詠む一首である。題詞の伝説を受け、山の名の由来を語って、一連の歌の基となっている。
題詞には、大伴佐提比古郎子が朝廷の命を受けて海のかなたの国へ使いし、船出して去っていくとき、妻の松浦佐用姫が別れのたやすく会うことの難いのを嘆き、高い山の峰に登って離れ去る船を遠く望み、ついに領巾を脱いで振ったこと、そばの者たちも涙を流さない者はなく、それでこの山を領巾振りの嶺と呼ぶようになったことが記される。この山は唐津の鏡山とされる。この一連の作者については、大伴旅人とする説、山上憶良とする説などがあり、定説を見ない。
初句「遠つ人」は「松浦」にかかる枕詞で、遠くの人を待つ意から「まつ」を導く。
二句「松浦佐用姫」は、伝説の主人公の名を掲げる。
三句「夫恋ひに」は、夫を恋い慕って、の意である。
四句「領巾振りしより」は、領巾を振ったときから、の意で、山の名の起こりを示す。
結句「負へる山の名」は、その名を負っている山の名である、と体言止めで結ぶ。次歌以降の追和の歌は、この「山の名」を受けて詠み継がれる。
ひれ:女性が首や肩にかけて左右に垂らす細長い布
つまごひ:夫や妻を恋い慕うこと
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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百日しも行かぬ松浦道今日行きて 明日は来なむを何か障れる
- 次の歌
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山の名と言ひ継げとかも佐用姫が この山の上に領巾を振りけむ