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山の名と言ひ継げとかも佐用姫が
この山の上に領巾を振りけむ

歌の意味
山の名として語り継げというつもりで、佐用姫はこの山の上で領巾を振ったのだろうか。
鑑賞
巻第五 雑歌 872

詞書は前の歌に続き「後の人の追和」
 後の世まで山の名として語り継げと、佐用姫はこの山の上で領巾を振ったのだろうかと詠む一首である。前歌の「山の名」を受け、佐用姫の行為に後世へ伝える意図を読みとっている。
 題詞には、大伴佐提比古郎子が朝廷の命を受けて海のかなたの国へ使いし、船出して去っていくとき、妻の松浦佐用姫が別れのたやすく会うことの難いのを嘆き、高い山の峰に登って離れ去る船を遠く望み、ついに領巾を脱いで振ったこと、そばの者たちも涙を流さない者はなく、それでこの山を領巾振りの嶺と呼ぶようになったことが記される。この山は唐津の鏡山とされる。この一連の作者については、大伴旅人とする説、山上憶良とする説などがあり、定説を見ない。

 初句「山の名と」は、前歌の結句「山の名」を受けて起こす。
 二句「言ひ継げとかも」の「かも」は疑問の係助詞で、語り継げというのだろうかと推し量る。本巻の第八百十四首の鎮懐石の歌の「言ひ継げと」と同じく、伝説の永続を思う表現である。
 三句「佐用姫が」は、伝説の主人公をいう。
 四句「この山の上に」は、実際に領巾を振った山の上をいう。
 結句「領巾を振りけむ」の「けむ」は過去推量で、二句の「かも」を受けて、振ったのであろうかと結ぶ。

ひれ:女性が首や肩にかけて左右に垂らす細長い布
出典
万葉集
前の歌
遠つ人松浦佐用姫夫恋ひに 領巾振りしより負へる山の名
次の歌
万世に語り継げとしこの丘に 領巾振りけらし松浦佐用姫