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万世に語り継げとしこの丘に
領巾振りけらし松浦佐用姫

歌の意味
万代ののちまで語り継げと、この山の上で領巾を振ったらしい。松浦佐用姫は。
鑑賞
巻第五 雑歌 873

詞書は前の歌に続き「最も後の人の追和」
 万代ののちまで語り継げと、松浦佐用姫はこの山で領巾を振ったのであるらしいと詠む一首である。前歌の問いかけの形を推定の形に改め、伝説を後世に伝える意志を佐用姫に見ている。
 題詞には、大伴佐提比古郎子が朝廷の命を受けて海のかなたの国へ使いし、船出して去っていくとき、妻の松浦佐用姫が別れのたやすく会うことの難いのを嘆き、高い山の峰に登って離れ去る船を遠く望み、ついに領巾を脱いで振ったこと、そばの者たちも涙を流さない者はなく、それでこの山を領巾振りの嶺と呼ぶようになったことが記される。この山は唐津の鏡山とされる。この一連の作者については、大伴旅人とする説、山上憶良とする説などがあり、定説を見ない。

 初句「万世に」は、万代ののちまでも、の意で、前歌の「山の名と」よりも長い時間の尺度で詠む。
 二句「語り継げとし」の「し」は強意で、前歌の「言ひ継げとかも」を受ける。
 三句「この丘に」は「このたけに」と読み、領巾を振った山をいう。
 四句「領巾振りけらし」の「けらし」は過去の事柄を根拠をもって推定する助動詞で、振ったらしいと推し量る。ここで句が切れる四句切れである。
 結句「松浦佐用姫」は、倒置によって主人公の名を最後に置く体言止めで、次の二首も同じ結句をもつ。

たけ:高い山、山の峰
出典
万葉集
前の歌
山の名と言ひ継げとかも佐用姫が この山の上に領巾を振りけむ
次の歌
海原の沖行く船を帰れとか 領巾振らしけむ松浦佐用姫