海原の沖行く船を帰れとか
領巾振らしけむ松浦佐用姫
- 歌の意味
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海原の沖を行く船に、帰って来いというつもりで、領巾をお振りになったのだろうか。松浦佐用姫は。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 874
詞書は前の歌に続き「最も最も後の人の追和二首」
海原の沖を行く船に帰れと願って、佐用姫は領巾を振ったのだろうかと詠む一首である。前の二首が山の名を語り継ぐ意図に目を向けたのに対し、夫を呼び戻したいという佐用姫の切ない願いに寄り添っている。
題詞には、大伴佐提比古郎子が朝廷の命を受けて海のかなたの国へ使いし、船出して去っていくとき、妻の松浦佐用姫が別れのたやすく会うことの難いのを嘆き、高い山の峰に登って離れ去る船を遠く望み、ついに領巾を脱いで振ったこと、そばの者たちも涙を流さない者はなく、それでこの山を領巾振りの嶺と呼ぶようになったことが記される。この山は唐津の鏡山とされる。この一連の作者については、大伴旅人とする説、山上憶良とする説などがあり、定説を見ない。
初句「海原の」は、広々とした海をいい、視点を山から海へと移す。
二句「沖行く船を」は、夫の乗って去っていく船をいう。
三句「帰れとか」の「か」は疑問の係助詞で、帰れというつもりか、と佐用姫の心を推し量る。
四句「領巾振らしけむ」の「し」は尊敬の助動詞「す」の連用形、「けむ」は過去推量で、三句の「か」を受けて結ぶ。
結句「松浦佐用姫」は前歌と同じ結句で、倒置による体言止めで主人公の名を示す。
ひれ:女性が首や肩にかけて左右に垂らす細長い布
うなはら:広々とした海
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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万世に語り継げとしこの丘に 領巾振りけらし松浦佐用姫
- 次の歌
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行く船を振り留みかねいかばかり 恋しくありけむ松浦佐用姫