行く船を振り留みかねいかばかり
恋しくありけむ松浦佐用姫
- 歌の意味
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去っていく船を領巾を振っても引き留めることができず、どれほど恋しかったことだろう。松浦佐用姫は。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 875
詞書は前の歌に続き「最も最も後の人の追和二首」
去っていく船を領巾を振っても引き留められず、佐用姫はどれほど恋しかったことだろうと思いやる一首である。一連の最後の歌として、伝説の由来から佐用姫の悲しみそのものへと焦点を移して結んでいる。
題詞には、大伴佐提比古郎子が朝廷の命を受けて海のかなたの国へ使いし、船出して去っていくとき、妻の松浦佐用姫が別れのたやすく会うことの難いのを嘆き、高い山の峰に登って離れ去る船を遠く望み、ついに領巾を脱いで振ったこと、そばの者たちも涙を流さない者はなく、それでこの山を領巾振りの嶺と呼ぶようになったことが記される。この山は唐津の鏡山とされる。この一連の作者については、大伴旅人とする説、山上憶良とする説などがあり、定説を見ない。
初句「行く船を」は、前歌の「沖行く船」を受け、去っていく船をいう。
二句「振り留みかね」は、領巾を振っても引き留めることができず、の意で、前歌の願いがかなわなかったことを示す。
三句「いかばかり」は、どれほど、の意で、佐用姫の心の深さを推し量る。
四句「恋しくありけむ」の「けむ」は過去推量で、恋しかったことだろうと思いやる。ここで句が切れる四句切れである。
結句「松浦佐用姫」は、第八百七十三首から三首続けて同じ結句を置き、一連を佐用姫の名で閉じる。
とどむ:引き留める
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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海原の沖行く船を帰れとか 領巾振らしけむ松浦佐用姫
- 次の歌
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天飛ぶや鳥にもがもや都まで 送りまをして飛び帰るもの