言ひつつも後こそ知らめとのしくも
寂しけめやも君いまさずして
- 歌の意味
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口ではこう言っていても、本当のところは後になってこそわかるだろう。あなたがいらっしゃらなくなって、少しばかり寂しいなどということがあろうか。
- 鑑賞
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巻第五 雑歌 878
詞書は前の歌に続き「書殿にて餞酒する日の倭歌四首」
今は口でこう言っていても、あなたがいなくなった後にこそ本当の寂しさがわかるだろう、少しばかりの寂しさで済むものかと詠む一首である。別れの宴のその場ではまだ実感しきれない喪失を、先回りして嘆いている。
題詞に「書殿にて餞酒する日の倭歌四首」とある。天平二年の冬、大納言に任じられて帰京する大伴旅人のために、大宰府の書殿で開かれた送別の宴での和歌で、「倭歌」は漢詩に対して和歌をいう。作者は記されていないが、続く三首と同じく山上憶良の作とみるのが通説である。
作者の山上憶良は、大宝元年に任じられた遣唐使の少録として唐に渡った官人で、帰国後は伯耆守や東宮に仕える役などを経て、神亀年間の末に筑前守として筑紫に赴任した。人生の苦しみや家族への情愛、貧しさなど、暮らしに根ざした主題を、漢籍や仏典の教養を背景に詠んだ歌人として知られる。
初句「言ひつつも」は、口ではこう言いながらも、の意で、宴で交わす別れの言葉を指す。
二句「後こそ知らめ」の「こそ」は係助詞で、已然形「め」で結ぶ係り結びである。後になってこそわかるだろうと言い、ここで句が切れる二句切れである。
三句「とのしくも」は語義に諸説あるが、少しばかり、わずかに、の意と解されている。
四句「寂しけめやも」の「めやも」は反語で、少しばかり寂しいなどということがあろうか、いや大いに寂しいだろうとの意になる。
結句「君いまさずして」の「います」は「あり」「をり」の尊敬語で、あなたがいらっしゃらなくなって、と倒置によって寂しさの理由を最後に示して結ぶ。
います:「あり」「をり」の尊敬語。いらっしゃる
- 作者
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山上憶良(推定)
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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ひともねのうらぶれ居るに竜田山 御馬近づかば忘らしなむか
- 次の歌
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万世にいましたまひて天の下 奏したまはね朝廷去らずて