古典和歌stream

音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫が
領巾振りきとふ君松浦山

歌の意味
噂には聞くが、目にはまだ見ていない。佐用姫が領巾を振ったという、君を待つ松浦山を。
鑑賞
巻第五 雑歌 883

詞書「三嶋王、後に松浦佐用嬪面の歌に追和する一首」
 噂には聞いているがまだ見たことはない、佐用姫が領巾を振ったという松浦山をと詠む一首である。松浦佐用姫の一連の歌に後から和したもので、伝説の地へのあこがれを表している。
 作者の三嶋王は、天武天皇の皇子舎人親王の子である。

 初句「音に聞き」は、噂に聞いて、の意である。
 二句「目にはいまだ見ず」は八音の字余りで、耳と目を対比して、実際には見ていないことを強調する。
 三句「佐用姫が」は、伝説の主人公をいう。
 四句「領巾振りきとふ」の「とふ」は「といふ」のつまった形で、振ったという、の意である。
 結句「君松浦山」は、「君を待つ」の「待つ」と地名の「松浦」の「松」を掛けた掛詞で、夫を待つ佐用姫の心を山の名に重ねて体言止めで結ぶ。本巻の第八百六十五首の「君を待つ松浦の浦」とも同じ掛け方である。

ひれ:女性が首や肩にかけて左右に垂らす細長い布
まつ:「待つ」意と、地名の松浦の「松」を掛ける
作者
三嶋王
出典
万葉集
前の歌
我が主の御霊賜ひて春さらば 奈良の都に召上げたまはね
次の歌
国遠き道の長手をおほほしく 今日や過ぎなむ言どひもなく