白波の千重に来寄する住吉の
岸の埴生ににほひて行かな
- 歌の意味
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白波が幾重にも寄せてくる住吉の岸の埴生の土で、衣を美しく染めて行こう。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 932
詞書は前の歌に続き「反歌一首」
白波が幾重にも寄せてくる住吉の岸の埴生の土で、衣を美しく染めて行こうと詠む歌である。美しい浜の土で衣を染めることで、住吉の地を讃え、その記念を身に留めて帰ろうとする心を述べている。
直前の長歌(第九百三十一首)は「車持朝臣千年が作る歌」と題され、朝なぎには千重波、夕なぎには五百重波が寄せる住吉の浜の清らかさを讃えている。題詞に年月は記されていないが、神亀二年(725)十月の難波行幸の歌の次に置かれている。住吉は現在の大阪市住吉区のあたりで、当時は海に面した浜であった。
作者の車持千年は奈良時代前期の宮廷歌人で、伝は未詳である。笠金村、山部赤人と同じ時期に行幸に従って歌を詠んだ人物である。
本歌の白波は、巻頭近くの第九百八首の「たぎつ白波」が吉野の川の白波であったのに対し、ここでは住吉の海の白波であり、行幸の歌が山川の景から海辺の景へと移っていることを示している。
初句「白波の」は、長歌の「白波のい咲き廻れる住吉の浜」を受けている。
二句「千重に来寄する」は、幾重にも重なって寄せてくるの意で、長歌の「千重波寄せ」を受け、次の「住吉」を修飾している。
三句「住吉の」は、摂津国の住吉を指し、「すみのえ」と読む。
四句「岸の埴生に」は、岸の埴生の土での意である。「埴生」は赤や黄の色をした粘土の土地で、その土で衣を染めた。
結句「にほひて行かな」は、美しく染まって行こうの意である。「にほふ」は色が美しく映える意で、「な」は自らの意志を表す終助詞である。
ちへ:幾重にも重なっていること
すみのえ:摂津国の地名。現在の大阪市住吉区のあたり
はにふ:赤や黄の色をした粘土の土地。衣を染めるのに用いた
にほふ:色が美しく照り映える、色に染まる
- 作者
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車持千年
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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海人娘女棚なし小舟漕ぎ出らし 旅の宿りに楫の音聞こゆ
- 次の歌
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朝なぎに楫の音聞こゆ御食つ国 野島の海人の舟にしあるらし