風吹けば波か立たむとさもらひに
都太の細江に浦隠り居り
- 歌の意味
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風が吹くので、波が立つだろうかと、様子をうかがうために、都太の細江の入り江に隠れてとどまっている。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 945
詞書は前の歌に続き「反歌三首」
風が吹いて波が立つかもしれないと、都太の細江の入り江に船を寄せ、天候をうかがって待っていると詠む歌である。直前の長歌(第九百四十二首)は「辛荷の島を過ぐる時に、山部宿祢赤人が作る歌」と題され、妻と別れて船旅を続ける作者が、淡路の野島を過ぎ、辛荷の島の間から家の方を見やると、青山も白雲に隔てられて見えないと嘆いている。この歌は反歌三首の結びにあたる。
長歌の「旅の日長み」という嘆きを受け、先へ進めずに入り江にとどまる船旅のもどかしさを、淡々とした叙述で描いている。都太の細江は、今の兵庫県姫路市飾磨区の津田付近の入り江とされる。
作者の山部赤人は奈良時代前期の宮廷歌人で、聖武天皇の行幸に従って多くの讃歌を残した。自然の景を清澄に描く叙景歌に優れ、後世、柿本人麻呂と並んで歌聖と仰がれた歌人である。
初句「風吹けば」は、風が吹くのでの意で、確定条件を示し、二句の心配の理由となっている。
二句「波か立たむと」の「か」は疑問の係助詞で、「む」で結ばれ、波が立つだろうかの意となる。「と」で受けて、三句の行動の理由を示している。
三句「さもらひに」は、様子をうかがうためにの意で、船旅で天候や潮の具合を見はからって待つことをいう。
四句「都太の細江に」は、都太の細長い入り江での意で、船を寄せた具体的な場所を示している。
結句「浦隠り居り」は、入り江に隠れてとどまっているの意である。前歌の第九百四十四首の初句「島隠り」と対をなし、島陰を進む船と浦にこもって動けない船という、船旅の二つの様子を並べている。
さもらふ:様子をうかがって待つ、機会を見はからう
ほそえ:細長い入り江
うらがくる:入り江に隠れる
- 作者
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山部赤人
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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島隠り我が漕ぎ来れば羨しかも 大和へ上るま熊野の船
- 次の歌
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須磨の海女の塩焼き衣の慣れなばか 一日も君を忘れて思はむ