大夫の行くといふ道ぞおほろかに
思ひて行くな大夫の伴
- 歌の意味
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ますらおが行くという道であるぞ。おろそかに思って行くな、ますらおたちよ。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 974
詞書は前の歌に続き「反歌一首」
これはますらおの行く道であるから、おろそかに思って行ってはならないと、節度使たちを戒め励ました歌である。直前の長歌(第九百七十三首)は「天皇の酒を節度使の卿等に賜ふ御歌」と題され、天平四年(732)に任じられた節度使たちに、天皇が酒を賜って送り出した折の作である。
長歌は、節度使たちが遠い任地へ赴くならば自分は安らかに手をこまねいていられると述べ、天皇自らの手で撫でてねぎらい、帰ってきた日にともに飲もうと、この豊御酒を賜っている。反歌の本歌は、そのねぎらいを受けて、任務の重さを心に刻んで行けと引き締めている。
作者の聖武天皇は文武天皇の皇子で、母は藤原宮子である。神亀元年(724)に即位し、のちに東大寺の大仏造立を発願した。左注には、この御歌を太上天皇、すなわち元正太上天皇の御製とする説もあると記されている。
一首は初句と結句に同じ「大夫の」を置いて一首を挟み込む構成である。前の反歌の第九百七十二首が宇合を「男」と讃えたのに対し、本歌は天皇の立場から節度使たちを「大夫の伴」と呼んで戒めており、送る側の讃辞と命じる側の訓戒という対をなしている。
初句「大夫の」は、立派な男子、勇ましい男子の意で、節度使として赴く者たちを指す。
二句「行くといふ道ぞ」は、行くという道であるぞの意で、強意の係助詞「ぞ」で強く言い切る。ここで意味が切れる二句切れである。字余りの句である。
三句「おほろかに」は、いいかげんに、おろそかにの意で、次の句の「思ひて」にかかる。
四句「思ひて行くな」は、思って行ってはならないの意で、「な」は禁止の終助詞である。任務を軽んじることを強く戒めている。
結句「大夫の伴」は、ますらおたちよと呼びかける言葉で、「伴」は同じ務めに従う人々をいう。初句の「大夫の」を繰り返して体言止めで結び、呼びかけの力を強めている。
ますらを:立派な男子、勇ましい男子
とも:同じ務めに従う人々、一団
- 作者
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聖武天皇
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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千万の軍なりとも言挙げせず 取りて来ぬべき男とぞ思ふ
- 次の歌
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かくしつつあらくをよみぞたまきはる 短き命を長く欲りする