天にます月読壮士賄はせむ
今夜の長さ五百夜継ぎこそ
- 歌の意味
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天にいらっしゃる月読壮士よ、贈り物をしよう。今夜の長さを、五百夜分つなぎ合わせてほしい。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 985
詞書「湯原王の月の歌二首」
天にいる月の神、月読壮士に贈り物をするから、今夜の長さを五百夜分もつないで長くしてほしいと願う歌である。本巻には第九百八十首から第九百八十七首まで、月を詠んだ歌が作者を替えて八首続けて並べられている。本歌は湯原王の月の歌二首の一首目で、一連の六首目にあたる。
月を月読壮士と呼んで人のように扱い、贈り物と引きかえに夜を長くしてほしいと頼むという、大胆でおおらかな趣向の歌である。今夜が楽しく、あるいは大切な夜であるために、少しでも長く続いてほしいと願う心が、五百夜という誇張によって表されている。
作者の湯原王は天智天皇の皇子志貴皇子の子で、奈良時代前期の歌人である。
月を「月読壮士」と男子に見立てる表現は、本巻の第九百八十三首の「ささら愛壮士」と同じく、月を「壮士」と呼ぶ擬人の趣向を共有している。また今夜の長さを五百夜分に延ばしてほしいという願いは、短い命を長くと願った第九百七十五首の「短き命を長く欲りする」と、一夜と生涯という異なる尺度で、短いものを長くあれと願う点で通じている。
初句「天にます」は、天にいらっしゃるの意で、「ます」は「あり」「をり」の尊敬語である。月を天にいる神として敬っている。
二句「月読壮士」は、月の神である月読を若い男子に見立てた呼び名で、ここでは呼びかけの言葉となっている。
三句「賄はせむ」は、贈り物をしようの意である。「まひ」は神などへの贈り物、謝礼をいい、「む」は意志を表す。ここで意味が切れる三句切れである。
四句「今夜の長さ」は、今夜という一夜の長さをいう。限られた一夜を惜しむ思いがこもっている。
結句「五百夜継ぎこそ」は、五百夜分をつなぎ合わせてほしいの意で、「こそ」は他に対する願望を表す終助詞である。五百夜という誇張によって、今夜を惜しむ心の強さを示している。
つくよみ:月読。月の神、また月
まひ:神などへの贈り物、謝礼
いほよ:五百夜。数多くの夜
つぐ:つなぎ合わせる、続ける
- 作者
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湯原王
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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雲隠り去方をなみと我が恋ふる 月をや君が見まく欲りする
- 次の歌
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はしきやし間近き里の君来むと おほのびにかも月の照りたる