はしきやし間近き里の君来むと
おほのびにかも月の照りたる
- 歌の意味
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ああいとしい、すぐ近くの里にいるあなたが来るだろうというので、ゆったりと月が照っているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 986
詞書は前の歌に続き「湯原王の月の歌二首」
すぐ近くの里にいるいとしい人が訪ねて来るだろうというので、月がゆったりと照っているのだろうか、と詠んだ歌である。本巻には第九百八十首から第九百八十七首まで、月を詠んだ歌が作者を替えて八首続けて並べられている。本歌は湯原王の月の歌二首の二首目で、一連の七首目にあたる。
月が明るく照る夜を、近くに住む人が訪ねて来るのを月が照らして助けているかのように捉えている。人の訪れを待つ心と、夜道を照らす月の光とを結びつけた歌である。四句の「おほのびに」は語義が定まらない語で、ゆったりと、のびやかにの意に解する説がある。
作者の湯原王は天智天皇の皇子志貴皇子の子で、奈良時代前期の歌人である。
一連の中で、第九百八十首や第九百八十一首が山の高さのために遅れる月の出を待ちわびたのに対し、本歌では月はすでにゆったりと照っており、待つ対象が月から訪ねて来る人へと移っている。
初句「はしきやし」は、ああいとしいの意で、次の「君」を慕う気持ちを表す。
二句「間近き里の」は、すぐ近くの里のの意で、訪ねて来る人の住む場所を示す。近いからこそ訪れを期待できる気持ちがこもる。
三句「君来むと」は、あなたが来るだろうとての意で、「む」は推量を表す。月が照る理由を示している。
四句「おほのびにかも」は、語義の定まらない語「おほのび」を含む句で、ゆったりと、のびやかにの意に解される。「かも」は疑問の係助詞で、結句の「照りたる」で結ぶ。
結句「月の照りたる」は、月が照っているの意で、四句の係助詞「かも」を受けて連体形「照りたる」で結ぶ係り結びである。
おほのび:語義未詳。ゆったりと、のびやかなさまと解される
さと:人の住む里
- 作者
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湯原王
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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天にます月読壮士賄はせむ 今夜の長さ五百夜継ぎこそ
- 次の歌
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待ちかてに我がする月は妹が着る 御笠の山に隠りてありけり