待ちかてに我がする月は妹が着る
御笠の山に隠りてありけり
- 歌の意味
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待ちかねて私が待っている月は、妹が着る笠という名の御笠の山に隠れていたのだった。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 987
詞書「藤原八束朝臣の月の歌一首」
待ちかねていた月は、御笠の山に隠れていたのだったと気づく歌である。本巻には第九百八十首から第九百八十七首まで、月を詠んだ歌が作者を替えて八首続けて並べられている。本歌はその八首目で、一連を締めくくる歌である。
なかなか出ない月を待ちわびていた作者が、月が御笠の山の陰に隠れていたのだとあらためて気づいた驚きを「けり」で表している。一連の初めの第九百八十首が、御笠の山が高いために月が出ないのかと推し量ったのに対し、本歌はその答えを示すかのように、月は御笠の山に隠れていたと結んでいる。
作者の藤原八束は藤原房前の子で、のちに真楯と名を改め、大納言に至った。
本歌は一連の初めの第九百八十首と、同じ「御笠の山」を詠んで呼応している。第九百八十首が「雨隠り」、本歌が「妹が着る」と、ともに笠にちなむ枕詞を御笠にかけており、月を待つ心で始まった一連を、月が隠れていた場所を明かすことで閉じる構成になっている。
初句「待ちかてに」は、待ちきれずに、待ちかねての意である。月を待ちわびる心を率直に示している。
二句「我がする月は」は、私が待っている月はの意で、初句と合わせて待ちかねている月を指す。係助詞「は」で取り立てている。
三句「妹が着る」は、「御笠」にかかる枕詞である。妻が着る笠の意から、笠の音を持つ御笠にかかる。
四句「御笠の山に」は、奈良の都の東にある御笠山をいう。第九百八十首と同じ山であり、一連の初めと終わりを結んでいる。
結句「隠りてありけり」は、隠れていたのだったの意で、「けり」は今になって気づいた驚きを表す。字余りの句である。待ちわびた月の行方を明かして、一連を結んでいる。
まちかつ:待ちこらえる。打消を伴って、待ちきれない意となる
こもる:隠れる、中にひそむ
- 作者
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藤原八束
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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はしきやし間近き里の君来むと おほのびにかも月の照りたる
- 次の歌
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春草は後はうつろふ巌なす 常盤にいませ貴き我が君