故郷の飛鳥はあれどあをによし
奈良の明日香を見らくしよしも
- 歌の意味
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古い都の飛鳥もよいけれど、奈良の明日香を見るのはよいものだ。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 992
詞書「大伴坂上郎女、元興寺の里を詠む歌一首」
古い都の飛鳥もよいけれども、奈良に移ってきた明日香の里を見るのもまた好ましいと詠んだ歌である。元興寺はもと飛鳥にあった飛鳥寺(法興寺)で、平城遷都の後、養老二年(718)に平城京へ移された。寺とともに移り住んだ人々のいる寺の周辺は「奈良の明日香」とも呼ばれたとされ、本歌はその新しい里を讃えている。
「飛鳥」と「明日香」という同じ地名を、旧都の飛鳥と奈良の新しい明日香とに書き分け、古いものへの懐かしさを残しつつ新しい都の里をよしとする、軽やかな機知の歌である。
作者の大伴坂上郎女は大伴安麻呂の娘で、大伴旅人の異母妹にあたる。坂上の里に住んだことからこの名で呼ばれ、甥の大伴家持を後見し、娘の坂上大嬢はのちに家持の妻となった。万葉集を代表する女性歌人の一人である。
初句「故郷の」は、古い都、かつての都の意である。「ふるさと」は現代語の生まれ故郷ではなく、以前に都のあった土地を指し、ここでは飛鳥を言う。
二句「飛鳥はあれど」は、飛鳥もよいけれどもの意である。「あれど」は逆接で、旧都の飛鳥のよさを認めたうえで、下の句の奈良の明日香へと心を向けている。
三句「あをによし」は、奈良にかかる枕詞である。旧都の飛鳥に対して、新しい都の奈良を枕詞で美しく飾っている。
四句「奈良の明日香を」は、平城京に移された元興寺の周辺の里を指す。二句の「飛鳥」と同じ地名を重ねることで、旧都と新都の二つのあすかが対比されている。
結句「見らくしよしも」は、見ることはよいものだの意である。「見らく」は「見る」のク語法、「し」は強意の助詞、「も」は詠嘆を表す。新しい里を見るよろこびを素直に述べて一首を結ぶ。
ふるさと:古い都、以前に都のあった土地
みらく:見ること
- 作者
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大伴坂上郎女
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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石走りたぎち流るる泊瀬川 絶ゆることなくまたも来て見む
- 次の歌
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月立ちてただ三日月の眉根掻き 日長く恋ひし君に逢へるかも