眉のごと雲居に見ゆる阿波の山
懸けて漕ぐ舟泊り知らずも
- 歌の意味
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眉のように遠く雲のかなたに見える阿波の山を目指して漕いでゆく舟の、泊まる港もわからないことだ。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 998
詞書は前の歌に続き「春三月、難波の宮に幸せる時の歌六首」
難波の海から、眉のように細く遠く雲のかなたに見える阿波の山を目指して漕いでゆく舟を眺め、その舟がどこに泊まるのかもわからないと詠んだ歌である。天平六年(734)三月、聖武天皇が難波宮に行幸した折の歌六首の一首である。はるかな海の広がりと、行方の知れない舟への思いが、旅の心細さとともに表されている。左注に「右一首船王の作」とある。
阿波の山は、難波の海から淡路島の向こうに遠く望まれる阿波国(現在の徳島県)の山々とみられる。海上はるかに霞む山並みを眉にたとえる見立ては、山の細く長い稜線をよくとらえている。
作者の船王は舎人親王の子で、淳仁天皇の兄にあたる。天平宝字八年(764)の藤原仲麻呂の乱に連座して隠岐に流された。
初句「眉のごと」は、眉のようにの意である。遠くに細く横たわる山並みを女性の眉にたとえている。本巻の第九百九十三首と第九百九十四首が三日月を眉に見立てたのに続き、ここでは山の稜線が眉に見立てられている。
二句「雲居に見ゆる」は、雲のかかる遠い空のかなたに見えるの意である。「雲居」は雲のある所、はるか遠くを表す。
三句「阿波の山」は、阿波国の山々を指す。名詞で言い切り、上の句全体で遠景の山を描いている。
四句「懸けて漕ぐ舟」は、阿波の山を目指して漕いでゆく舟の意である。「懸く」は目標として心にかけることをいい、遠い山と眼前の舟とが結びつけられている。
結句「泊り知らずも」は、舟がどこに泊まるのかわからないことだの意である。「泊り」は舟の停泊する所、「も」は詠嘆を表す。はるかな海をゆく舟への思いを余韻として残して一首を結ぶ。
くもゐ:雲のある所、はるか遠くの空
かく:目指す、目標として心にかける
とまり:舟の泊まる所、港
- 作者
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船王
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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住吉の粉浜のしじみ開けもみず 隠りてのみや恋ひわたりなむ
- 次の歌
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茅渟廻より雨ぞ降り来る四極の海人 綱手干したり濡れもあへむかも