馬の歩み抑へ留めよ住吉の
岸の埴生ににほひて行かむ
- 歌の意味
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馬の歩みを抑えてとめよ。住吉の岸の埴生の土に衣を染めて行こう。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 1002
詞書は前の歌に続き「春三月、難波の宮に幸せる時の歌六首」
馬の歩みを抑えてとめよと呼びかけ、住吉の岸の美しい色の土に衣を染めて行こうと詠んだ歌である。天平六年(734)三月、聖武天皇が難波宮に行幸した折の歌六首の一首である。左注に「右一首安倍朝臣豊継の作」とある。
住吉の岸の埴生は、黄色や赤の色をした美しい土として知られ、衣を染める土として詠まれた。行幸の地を去りがたく思い、その土地の色を身にまとって旅の記念にしようとする心がこめられている。巻第一の第六十九首にも「岸の埴生ににほはさましを」と詠まれ、住吉の岸の埴生は古くから歌に詠まれた景物である。
作者の安倍豊継は奈良時代の官人で、安倍朝臣の氏に属する。
本歌は難波行幸の一連六首の最後に置かれ、一連の最初の第九百九十七首の「住吉の粉浜」と、本歌の「住吉の岸」とが呼応して、一連を住吉の地で囲んでいる。
初句「馬の歩み」は、馬の歩く足取りの意である。字余りの句で、行幸の列が進んでゆく様子を示している。
二句「抑へ留めよ」は、抑えてとめよの意で、命令形で言い切る二句切れの歌である。住吉の岸を去りがたい思いが、急ぐ馬をとめさせる呼びかけとなっている。
三句「住吉の」は、摂津国の住吉を指す地名である。一連の初めの第九百九十七首の「住吉の」と同じ句であり、一連の首尾の呼応をなす。
四句「岸の埴生に」は、岸の黄赤色の土にの意である。「埴生」は赤や黄の色をした粘土、またその土のある所をいい、衣を染めるのに用いられた。
結句「にほひて行かむ」は、色に染まって行こうの意である。「にほふ」は色が美しく映えること、衣が色に染まることをいい、「む」は意志を表す。土地の色を身にまとって旅を続けようとする心で一首を結ぶ。
はにふ:黄や赤の色をした粘土、またその土のある所
にほふ:色が美しく映える、色に染まる
- 作者
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安倍豊継
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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大夫は御狩に立たし娘子らは 赤裳裾引く清き浜びを
- 次の歌
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海女娘子玉求むらし沖つ波 畏き海に舟出せり見ゆ