山の端にいさよふ月の出でむかと
我が待つ君が夜はくたちつつ
- 歌の意味
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山の端でためらっている月が出るように、今にも来るかと私が待っているあなたなのに、夜は更けてゆくばかりだ。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 1008
詞書「忌部首黒麻呂、友の賖く来るを恨むる歌一首」
山の端でためらってなかなか出ない月のように、今来るか今来るかと待っている友がなかなか来ないまま、夜が更けてゆくと恨む歌である。詞書の「賖く来る」は来るのが遅いことで、約束した友の来訪が遅いのを恨んで詠んだものである。
出るのをためらう月と、来るのが遅い友とを重ね、待つ身のもどかしさを夜の景の中に描いている。恋の歌に多い「待つ」趣向を、友との交わりに用いた一首である。
作者の忌部黒麻呂は奈良時代の官人で、忌部首の氏に属する。忌部氏は朝廷の祭祀に携わった氏族である。
初句「山の端に」は、山の稜線のあたりにの意である。月が今にも姿を現そうとする場所を示している。
二句「いさよふ月の」は、ためらっている月のの意である。「いさよふ」は進もうとしてためらうことで、山の端からなかなか出ない月を表す。初句から二句までが、三句の「出でむか」を導く比喩の働きをしている。
三句「出でむかと」は、出るだろうかと、の意である。月が出ることと、友が姿を現すことの両方に通じている。
四句「我が待つ君が」は、私が待っているあなたがの意である。「君」は来訪を約束した友を指す。
結句「夜はくたちつつ」は、夜は更けてゆくばかりだの意である。「くたつ」は盛りを過ぎて衰える、夜が更けることをいい、「つつ」で言いさして、待ち続ける時間の長さとやるせなさを余韻として残して一首を結ぶ。
やまのは:山の稜線、山の空に接するあたり
いさよふ:ためらう、進まずにとどまる
くたつ:盛りを過ぎる、夜が更ける
- 作者
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忌部黒麻呂
- 出典
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万葉集
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言問はぬ木すら妹と兄とありといふを ただ独り子にあるが苦しさ
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橘は実さへ花さへその葉さへ 枝に霜降れどいや常葉の木