あらかじめ君来まさむと知らませば
門に宿にも玉敷かましを
- 歌の意味
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前もってあなたがおいでになると知っていたなら、門にも家にも玉を敷きつめておいただろうに。
- 鑑賞
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巻第六 雑歌 1013
詞書「天平九年丁丑の春正月、橘少卿并せて諸大夫等、弾正尹門部王の家に集ひて宴する歌二首」
前もって客人が来ると知っていたなら、門にも家の中にも玉を敷いてお迎えしたのに、という主人の歓迎の歌である。「玉敷かましを」と、実際にはできなかったもてなしを仮に述べることで、かえって客の来訪を心から喜ぶ気持ちを表している。
題詞によれば、天平九年(737)の正月、橘少卿をはじめとする官人たちが弾正尹の門部王の家に集まって宴を開いた折の歌二首である。橘少卿は橘佐為とされる。主人の門部王が客を迎える歌を詠み、客側の橘文成がそれに応えるという、宴の挨拶の贈答になっている。
左注に「右の一首は主人門部王」とあり、主人である門部王の作と分かる。左注にはさらに、のちに大原真人の姓を賜ったことが添えられている。
作者の門部王は奈良時代の皇族で、伊勢守、弾正尹、右京大夫などを歴任し、天平十一年(739)に高安王とともに大原真人の姓を賜って臣籍に下った。
本歌の「玉敷かましを」は、後に榎井王が追和した第千十五首の初句「玉敷きて」にそのまま受け継がれ、仮定の歓迎と実際の喜びという対をなしている。
初句「あらかじめ」は、前もっての意で、客の来訪が思いがけないものであったことを示している。
二句「君来まさむと」は、あなたがおいでになるだろうとの意である。「来ます」は「来」の尊敬語で、客人への敬意を込めている。
三句「知らませば」は、「ませ」が反実仮想の助動詞「まし」の未然形で、下の「ましを」と呼応し、事実に反する仮定を述べる。知っていたならば、と実際には知らなかったことを前提とする言い方である。
四句「門に宿にも」は、門にも家にもの意で、表から奥までもてなしの支度を整える様子を示している。
結句「玉敷かましを」は、玉を敷いただろうにの意である。「ましを」は反実仮想で、できなかったことを残念がる形をとりながら、客を迎える喜びを誇張して述べる。玉を敷くことは、貴人を迎える最上のもてなしを表す慣用的な表現である。
やど:家、家の敷地
たま:美しい石や宝玉
- 作者
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門部王
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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春さればををりにををり鴬の 鳴く我が山斎ぞやまず通はせ
- 次の歌
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一昨日も昨日も今日も見つれども 明日さへ見まく欲しき君かも