- 歌の意味
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天の海に雲の波が立ち、月の舟が星の林の中へ漕ぎ隠れてゆくのが見える。
- 鑑賞
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巻第七 雑歌 1068
詞書「天を詠む」
夜空を海に、雲を波に、月を舟に、群がる星々を林に見立て、月が星の間に隠れてゆく光景を詠んだ一首である。天体の運行を舟の航行としてとらえた壮大な見立ての歌で、万葉集の中でも特に想像力豊かな叙景歌として知られる。
巻第七の巻頭歌であり、雑歌の部の冒頭に「天を詠む」の題で置かれる。続いて「月を詠む」の歌群が並び、天から月へと主題を絞り込んでゆく配列となっている。
左注に「柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ」とあり、柿本人麻呂歌集所出の歌である。人麻呂自身の作か、人麻呂が書きとどめた歌かは定まらない。
初句「天の海に」は、大空を海に見立てた表現である。以下の「雲の波」「月の舟」「星の林」と一貫した見立てが連なり、一首全体が天上の海の情景として組み立てられている。
二句「雲の波立ち」は、空に広がる雲を海に立つ波に見立てる。連用形「立ち」で三句へと続けてゆく。
三句「月の舟」は、月を夜空を渡る舟に見立てた語である。本巻の第千二百九十五首(旋頭歌)にも「月の舟出づ」とあり、巻第十の第二千二百二十三首にも「天の海に月の舟浮け」と詠まれるなど、天空を航行する月の舟という発想は万葉の人々に親しまれていた。
四句「星の林に」は、群がり輝く星々を林に見立てる。海に林という取り合わせが意表をつき、舟が島陰の林に隠れるように月が星の中へ入ってゆく様を描く。
結句「漕ぎ隠る見ゆ」は、月の舟が漕ぎ進んで星の林に隠れてゆくのが見える、の意。「見ゆ」で結ぶことで、見立てを眼前の光景として完結させている。
こぎかくる:舟を漕ぎ進めて物陰に隠れる
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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浜清み浦うるはしみ神代より 千舟の泊つる大和太の浜
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常はさね思はぬものをこの月の 過ぎ隠らまく惜しき宵かも