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大夫の弓末振り起し狩高の
野辺さへ清く照る月夜かも

歌の意味
勇士が弓の末を振り起こして狩をする、その狩高の野辺までも清らかに照らしている月夜であることよ。
鑑賞
巻第七 雑歌 1070

詞書は前の歌に続き「月を詠む」
 狩高の野辺まで清らかに照らす月夜を讃えた一首である。上二句は勇ましい狩の姿を描いて地名「狩高」を導く序詞であり、月光が遠い野辺にまで満ちる明るさを大らかに詠む。
 狩高は高円山の麓の野とされ、平城京の東にあたる。月を詠む歌群の中で、前歌の月の入りを惜しむ情から、月光のさやかさを讃える歌へと移る。作者は未詳である。

 初句「大夫の」は、立派な男子、勇士の意である。狩をする勇ましい男の姿を描き出す。
 二句「弓末振り起し」は、弓の上端を振り立てる動作で、狩で矢を射ようと構える様を表す。初句からここまでで「狩」を導く序詞をなす。
 三句「狩高の」は地名で、序詞の「狩」を受けて「狩高」へと続ける。高円山の麓一帯を指すとされる。
 四句「野辺さへ清く」の「さへ」は添加の副助詞で、身近な所ばかりでなく遠い野辺までも、の意。月光の行き渡る広がりを示す。
 結句「照る月夜かも」は、名詞「月夜」に詠嘆の「かも」を添えて結ぶ。「月夜」は月そのもの、または月の照る夜をいう。

ますらを:立派な男子、勇士
ゆずゑ:弓の上端
かりたか:高円山の麓の地名とされる
出典
万葉集
前の歌
常はさね思はぬものをこの月の 過ぎ隠らまく惜しき宵かも
次の歌
山の端にいさよふ月を出でむかと 待ちつつ居るに夜ぞ更けにける