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明日の宵照らむ月夜は片寄りに
今夜に寄りて夜長くあらなむ

歌の意味
明日の宵に照るはずの月夜は、片寄って今夜の方へ寄り集まり、今夜がいっそう長くあってほしい。
鑑賞
巻第七 雑歌 1072

詞書は前の歌に続き「月を詠む」
 今夜の月夜を惜しむあまり、明日照るはずの月夜まで今夜に寄せて、夜を長くしてほしいと願う一首である。月夜を分けたり寄せたりできるものとして扱う、機知に富んだ発想が特徴である。
 前歌が月を待つうちに夜が更けたことを嘆いたのを受け、この歌では夜そのものを長くしたいという願いへと転じている。作者は未詳である。

 初句「明日の宵」は、翌日の夕べを指す。今夜と明日とを対比させる出発点となる句である。
 二句「照らむ月夜は」の「む」は推量で、照るであろう月夜は、の意。まだ来ない月夜を主題として取り出す。
 三句「片寄りに」は、一方に偏って、の意。明日の月夜を丸ごと今夜の側へ寄せてしまうことをいう。
 四句「今夜に寄りて」は、三句の「片寄り」と「寄り」を重ね、今夜の方へ寄り集まって、の意とする。語の反復が願いの切実さを強める。
 結句「夜長くあらなむ」の「なむ」は他に対する願望の終助詞で、夜が長くあってほしいと願う。一音多い字余りの句である。

かたより:一方に偏ること
つくよ:月、また月の照る夜
出典
万葉集
前の歌
山の端にいさよふ月を出でむかと 待ちつつ居るに夜ぞ更けにける
次の歌
玉垂の小簾の間通しひとり居て 見る験なき夕月夜かも