春日山おして照らせるこの月は
妹が庭にもさやけくありけり
- 歌の意味
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春日山を一面に照らしているこの月は、妻の家の庭にも明るく照っていたのだなあ。
- 鑑賞
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巻第七 雑歌 1074
詞書は前の歌に続き「月を詠む」
春日山一帯を照らす月が、恋しい妻の家の庭にも清らかに照っていたと気づいた感動を詠む一首である。同じ月の光が自分と妻とをつないでいるという思いがこもっている。
前歌がひとりで見る月の味気なさを嘆いたのに対し、この歌では月を通して恋人の存在を身近に感じており、対照的な趣をなしている。作者は未詳である。
初句「春日山」は、奈良の東にある山で、平城京から仰ぎ見る代表的な山である。
二句「おして照らせる」の「おして」は、一面に押し広げて、の意。「せる」は存続の助動詞「り」の連体形で、照らしている、の意となる。
三句「この月は」は、いま眺めている月を主題として示す。
四句「妹が庭にも」の「も」は、自分のいる所だけでなく妹の庭にも、の意。月光によって妹の家との隔たりが結ばれる。
結句「さやけくありけり」の「けり」は気づきの詠嘆で、明るく照っていたのだと改めて知った感動を表す。字余りの句である。
おす:押し広げる、一面に及ぼす
いも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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玉垂の小簾の間通しひとり居て 見る験なき夕月夜かも
- 次の歌
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海原の道遠みかも月読の 光少き夜は更けにつつ