- 歌の意味
-
海原を渡ってくる道のりが遠いからだろうか、月の光が乏しいまま、夜はしだいに更けてゆく。
- 鑑賞
-
巻第七 雑歌 1075
詞書は前の歌に続き「月を詠む」
月の光が弱いのは、月が海原の遠い道を渡ってくるからであろうかと推し量りつつ、更けてゆく夜を見守る一首である。月を遠い海路を旅する者のように見る発想がある。
巻頭の「月の舟」の歌と同様に、月の運行を海の道にたとえる見立てが用いられ、月を詠む歌群の中で響き合っている。作者は未詳である。
初句「海原の」は、広い海をいう。月が海原を渡ってくるという見立ての舞台を示す。
二句「道遠みかも」の「遠み」は「遠し」の語幹に「み」を付けたミ語法で、遠いので、の意。「かも」は疑問で、光の乏しい原因を推し量る。二句切れである。
三句「月読の」は、月を神格化した呼び名で、ここでは月そのものを指す。
四句「光少き」は、光が乏しい意で、月の光が十分に届かないことをいう。
結句「夜は更けにつつ」の「つつ」は継続を表し、夜がしだいに更けてゆく様を余韻をもって述べる。
うなはら:広々とした海
つくよみ:月の神、転じて月
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
春日山おして照らせるこの月は 妹が庭にもさやけくありけり
- 次の歌
-
ももしきの大宮人の罷り出て 遊ぶ今夜の月のさやけさ