大海に島もあらなくに海原の
たゆたふ波に立てる白雲
- 歌の意味
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大海には島一つないのに、海原のゆらゆらと揺れ動く波の上に立っている白雲よ。
- 鑑賞
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巻第七 雑歌 1089
詞書は前の歌に続き「雲を詠む」
島一つない大海原のうねる波の上に、白雲が立っている光景を詠む一首である。雲は山や島にかかるものという通念に対し、何もない海原から雲が立ちのぼる不思議さと雄大さとを表している。
左注に「右一首伊勢に従駕して作る」とあり、天皇の伊勢行幸に従った折の歌である。持統天皇六年(692)の伊勢行幸の際とする説がある。作者は未詳である。
前二首が山にかかる雲を詠んだのに対し、この歌では海上に立つ雲へと転じ、山と海とで雲を詠み分ける配列となっている。
初句「大海に」は、広い大海原に、の意である。
二句「島もあらなくに」の「なくに」は、打消しのク語法「なく」に助詞「に」を付けた形で、島もないのに、の意。
三句「海原の」は、見渡すかぎりの海面をいう。
四句「たゆたふ波に」の「たゆたふ」は、ゆらゆらと揺れ動く意。定まらない波の上という場所に雲が立つことを強調する。
結句「立てる白雲」は、名詞「白雲」で結ぶ体言止めである。「る」は存続の助動詞「り」の連体形で、立っている白雲、の意。
たゆたふ:ゆらゆらと揺れ動く、定まらない
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あしひきの山川の瀬の鳴るなへに 弓月が岳に雲立ちわたる
- 次の歌
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我妹子が赤裳の裾のひづちなむ 今日の小雨に我れさへ濡れな