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音に聞き目にはいまだ見ぬ吉野川
六田の淀を今日見つるかも

歌の意味
噂に聞いてはいたが、目ではまだ見ていなかった吉野川の六田の淀を、今日見たことよ。
鑑賞
巻第七 雑歌 1105

詞書は前の歌に続き「河を詠む」
 噂にばかり聞いていた吉野川の六田の淀を、初めて目にした感動を詠む一首である。名所を実際に見た喜びが率直に表現されている。
 本巻の第千九十二首「鳴る神の音のみ聞きし巻向の桧原の山を今日見つるかも」と構成がよく似ており、「音に聞く」ものを「今日見る」という型を共有する。第千百三首とも結句が同じである。作者は未詳である。

 初句「音に聞き」は、噂に聞き、の意。第千九十二首の「音のみ聞きし」と対応する。
 二句「目にはいまだ見ぬ」は、実際に目ではまだ見ていない、の意で、初句の「音」と対比される。字余りの句である。
 三句「吉野川」は、奈良県南部を流れる川である。
 四句「六田の淀を」は、吉野川の六田(現在の吉野町六田)のあたりの淀をいう。
 結句「今日見つるかも」は、第千九十二首、第千百三首と同じ結句で、実見の感動を表す。

むつた:吉野川沿いの地名
出典
万葉集
前の歌
馬並めてみ吉野川を見まく欲り うち越え来てぞ瀧に遊びつる
次の歌
かはづ鳴く清き川原を今日見ては いつか越え来て見つつ偲はむ