この小川霧ぞ結べるたぎちゆく
走井の上に言挙げせねども
- 歌の意味
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この小川に霧が立ちこめている。激しく流れてゆく走井のほとりで、言挙げなどしてはいないのに。
- 鑑賞
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巻第七 雑歌 1113
詞書は前の歌に続き「河を詠む」
激しく湧き流れる走井のほとりで、言挙げをしたわけでもないのに、小川に霧が立ちこめていることを詠む一首である。言挙げをすると霧が立つという古い信仰を背景に、神秘的な自然の気配をとらえている。
万葉集には嘆きの息が霧となって立つという発想も見え、言葉や息と霧とを結びつける古代の観念がうかがえる。作者は未詳である。
初句「この小川」は、眼前の小川をいう。
二句「霧ぞ結べる」は、係助詞「ぞ」を受けて連体形「る」で結ぶ係り結びで、霧が立ちこめている、の意。二句切れである。
三句「たぎちゆく」は、激しく流れてゆく、の意で、四句の「走井」にかかる。
四句「走井の上に」の「走井」は、勢いよく湧き出して流れる泉をいう。「上」は、ほとりの意である。
結句「言挙げせねども」の「言挙げ」は、言葉に出して言い立てることをいう。言挙げをすると霧が立つという信仰を背景に、そうしてもいないのに、といぶかしむ。
はしりゐ:勢いよく湧き出て流れる泉
ことあげ:言葉に出してことさらに言い立てること
- 出典
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万葉集
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はねかづら今する妹をうら若み いざ率川の音のさやけさ
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我が紐を妹が手もちて結八川 またかへり見む万代までに