島廻すと磯に見し花風吹きて
波は寄すとも採らずはやまじ
- 歌の意味
-
島めぐりをしていて磯で見かけた花は、たとえ風が吹いて波が打ち寄せても、採らずにはおくものか。
- 鑑賞
-
巻第七 雑歌 1117
詞書「花を詠む」
島めぐりの途中、磯で見た美しい花を、風が吹き波が寄せても必ず手に入れようと決意する一首である。花を恋しい女性にたとえ、障害があっても思いを遂げようとする意志を表すとも読める。
詞書「花を詠む」のもとの一首で、雑歌の中にありながら譬喩的な恋の歌の趣をもつ。本巻の第千三百十七首「海の底沈く白玉風吹きて海は荒るとも取らずはやまじ」と三句以下が似通っており、譬喩歌の部との対応がうかがえる。作者は未詳である。
初句「島廻すと」の「島廻」は、島のまわりをめぐることをいう。島めぐりをするとて、の意である。
二句「磯に見し花」は、磯で見かけた花、の意である。
三句「風吹きて」は、風が吹いて、の意。第千三百十七首の三句と同じ句である。
四句「波は寄すとも」の「とも」は逆接の仮定で、たとえ波が寄せても、の意。
結句「採らずはやまじ」は、採らないではおくまい、の意。「じ」は打消の意志で、強い決意を表す。第千三百十七首と同じ結句である。
しまみ:島のまわりを舟でめぐること
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
ぬばたまの我が黒髪に降りなづむ 天の露霜取れば消につつ
- 次の歌
-
いにしへにありけむ人も我がごとか 三輪の桧原にかざし折りけむ