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年月もいまだ経なくに明日香川
瀬々ゆ渡しし石橋もなし

歌の意味
年月もまだそれほど経っていないのに、明日香川の瀬ごとに渡してあった飛び石も、もうなくなってしまった。
鑑賞
巻第七 雑歌 1126

詞書は前の歌に続き「故郷を思ふ」
 都が移ってまださほど年月も経たないのに、明日香川の瀬に並べた飛び石がもうなくなっていると嘆く一首である。人の往来が絶えた旧都の荒廃が、飛び石という一つのものによって具体的に示されている。
 前歌と同じく詞書「故郷を思ふ」の歌で、前歌が故郷の美しい景を思いやったのに対し、この歌は変わり果てた故郷の姿を詠んでいる。作者は未詳である。

 初句「年月も」は、年月も、の意である。
 二句「いまだ経なくに」は、まだ経っていないのに、の意。「なくに」は打消のク語法に「に」を付けた逆接の表現である。
 三句「明日香川」は、飛鳥の地を流れる川で、前歌の「神なびの里」を具体的に受けている。
 四句「瀬々ゆ渡しし」の「ゆ」は経由を表し、瀬ごとに渡しておいた、の意となる。
 結句「石橋もなし」の「石橋」は、川の浅瀬に並べて置いた飛び石をいう。「も」によって、それさえもない、と荒廃を嘆く。

いしはし:川の浅瀬に並べて置いた飛び石
出典
万葉集
前の歌
清き瀬に千鳥妻呼び山の際に 霞立つらむ神なびの里
次の歌
落ちたぎつ走井水の清くあれば 置きては我れは行きかてぬかも