宇治川を舟渡せをと呼ばへども
聞こえざるらし楫の音もせず
- 歌の意味
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宇治川を舟で渡してくれよと何度も呼ぶけれども、聞こえないらしい。櫓の音もしない。
- 鑑賞
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巻第七 雑歌 1138
詞書は前の歌に続き「山背にて作る」
宇治川を渡ろうと渡し舟を何度も呼ぶのに、向こう岸には聞こえないらしく、櫓の音もしないと嘆く一首である。急流の広い川を前にした旅人の心細さと焦りとが伝わってくる。
本巻の第千百三十五首では網代人が舟を呼ぶ声を聞いていたが、この歌では作者自身が舟を呼ぶ立場となり、呼ぶ声と応えのない静けさとが対照されている。作者は未詳である。
初句「宇治川を」は、渡る対象の宇治川を示す。
二句「舟渡せをと」の「を」は呼びかけの間投助詞で、舟を渡してくれよ、と叫ぶ声をそのまま写している。
三句「呼ばへども」は、繰り返し呼ぶけれども、の意。第千百三十五首の「舟呼ばふ声」と対応する。
四句「聞こえざるらし」は、聞こえないらしい、の意。「らし」は推定で、四句切れとなる。
結句「楫の音もせず」は、櫓の音もしない、の意で、推定の根拠を倒置によって示している。
かぢ:舟を漕ぐ道具、櫓や櫂
よばふ:繰り返し呼ぶ
- 出典
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万葉集
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宇治人の譬への網代我れならば 今は寄らまし木屑来ずとも
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ちはや人宇治川波を清みかも 旅行く人の立ちかてにする