しなが鳥猪名野を来れば有馬山
夕霧立ちぬ宿りはなくて
- 歌の意味
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猪名野を通って来ると、有馬山に夕霧が立ちこめた。泊まる宿はないのに。
- 鑑賞
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巻第七 雑歌 1140
詞書「摂津にて作る」
猪名野を旅して来ると、有馬山に夕霧が立ちこめたが、泊まる宿もないと心細さを詠む一首である。日暮れの霧に包まれてゆく旅の不安が、簡潔な叙景の中に表れている。
詞書「摂津にて作る」のもとの最初の歌である。本文には「一本に云ふ、猪名の浦みを漕ぎ来れば」という異伝が添えられており、陸路ではなく海路の旅として伝える本もあったことがわかる。作者は未詳である。
初句「しなが鳥」は、「猪名」にかかる枕詞である。
二句「猪名野を来れば」は、摂津の猪名野を通って来ると、の意である。
三句「有馬山」は、摂津の北西、現在の神戸市北部にある山である。
四句「夕霧立ちぬ」の「ぬ」は完了で、夕霧が立ちこめた、と言い切る四句切れである。
結句「宿りはなくて」は、泊まる宿はなくて、の意。倒置で添え、旅の心細さを余韻として残している。
しながどり:水鳥の一種とされ、「猪名」「安房」にかかる枕詞となる
やどり:旅先で泊まる所
- 出典
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万葉集
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ちはや人宇治川波を清みかも 旅行く人の立ちかてにする
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武庫川の水脈を早みと赤駒の 足掻くたぎちに濡れにけるかも