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妹がため貝を拾ふと茅渟の海に
濡れにし袖は干せど乾かず

歌の意味
妻のために貝を拾おうとして茅渟の海で濡れてしまった袖は、干しても乾かない。
鑑賞
巻第七 雑歌 1145

詞書は前の歌に続き「摂津にて作る」
 妻への土産に貝を拾おうとして茅渟の海で濡らした袖が、干しても乾かないと詠む一首である。乾かない袖には、妻を思う心の深さ、あるいは恋しさの涙がにじんでいるともとれる。
 摂津にて作る歌の一首である。茅渟の海は大阪湾の南部、和泉の沖をいう。本巻の第千百八十六首の「濡れにし衣干せど乾かず」とよく似た表現であり、妹のために貝や玉を拾う発想は第千二百二十首などにも繰り返される。作者は未詳である。

 初句「妹がため」は、妻のために、の意。本巻の第千二百二十首も同じ初句である。
 二句「貝を拾ふと」は、貝を拾おうとして、の意である。
 三句「茅渟の海に」は、和泉の沖、大阪湾南部の海をいい、字余りの句である。
 四句「濡れにし袖は」は、濡れてしまった袖は、の意である。
 結句「干せど乾かず」は、干しても乾かない、の意。第千百八十六首の結句と同じ句である。

ひりふ:拾う
出典
万葉集
前の歌
悔しくも満ちぬる潮か住吉の 岸の浦廻ゆ行かましものを
次の歌
めづらしき人を我家に住吉の 岸の埴生を見むよしもがも