住吉に行くといふ道に昨日見し
恋忘れ貝言にしありけり
- 歌の意味
-
住吉へ行くという道で昨日見た恋忘れ貝は、名ばかりのものだったのだ。
- 鑑賞
-
巻第七 雑歌 1149
詞書は前の歌に続き「摂津にて作る」
住吉へ向かう道で昨日見た恋忘れ貝を手にしても恋しさは忘れられず、恋を忘れるとは名ばかりだったと嘆く一首である。家や恋人を思う心の深さが、貝の効き目のなさを通して表されている。
本巻の第千百四十七首が恋忘れ貝を拾いに行こうと願ったのを受け、この歌では貝を見たものの効き目はなかったと詠み、二首が期待と失望とで対応している。結句「言にしありけり」は本巻の第千百三十二首、第千百九十七首、第千二百十三首にも見える。作者は未詳である。
初句「住吉に」は、住吉へ、の意である。
二句「行くといふ道に」は、住吉へ行くという道で、の意で、字余りの句である。
三句「昨日見し」は、昨日見た、の意である。
四句「恋忘れ貝」は、持てば恋を忘れるという貝をいう。第千百四十七首の結句と同じ語である。
結句「言にしありけり」は、名ばかりのことであったのだ、の意。「けり」は気づきの詠嘆で、第千百九十七首も同じ結句である。
こひわすれがひ:持てば恋の苦しさを忘れるとされた貝
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
馬並めて今日我が見つる住吉の 岸の埴生を万代に見む
- 次の歌
-
住吉の岸に家もが沖に辺に 寄する白波見つつ偲はむ