古典和歌stream

円方の港の洲鳥波立てや
妻呼びたてて辺に近づくも

歌の意味
円方の港の洲にいる鳥は、波が立つからだろうか、妻をしきりに呼び立てて岸辺に近づいてくることよ。
鑑賞
巻第七 雑歌 1162

詞書は前の歌に続き「羈旅にて作る」
 円方の港の洲にいる水鳥が、波が立ったせいか、しきりに妻を呼びながら岸辺へ寄ってくる様を詠む一首である。妻を呼ぶ鳥の声に、旅の空で妻を思う作者自身の心が重ねられている。
 羈旅にて作る歌の一首で、円方は伊勢の地名、現在の三重県松阪市の海岸とされる。作者は未詳である。

 初句「円方の」は、伊勢の地名である。
 二句「港の洲鳥」は、港の洲にいる鳥をいう。
 三句「波立てや」は、波が立つからか、の意。已然形に疑問の「や」を付けて原因を推し量る。
 四句「妻呼びたてて」は、妻をしきりに呼び立てて、の意である。
 結句「辺に近づくも」は、岸辺に近づくことよ、の意。「も」は詠嘆を表す。

すどり:洲にいる水鳥
出典
万葉集
前の歌
家離り旅にしあれば秋風の 寒き夕に雁鳴き渡る
次の歌
年魚市潟潮干にけらし知多の浦に 朝漕ぐ舟も沖に寄る見ゆ