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夕なぎにあさりする鶴潮満てば
沖波高み己妻呼ばふ

歌の意味
夕なぎの中で餌をあさる鶴は、潮が満ちてくると、沖の波が高いので、自分の妻を呼び続けている。
鑑賞
巻第七 雑歌 1165

詞書は前の歌に続き「羈旅にて作る」
 夕なぎに餌をあさっていた鶴が、潮が満ちて沖の波が高くなると、しきりに妻を呼ぶ様を詠む一首である。妻を呼ぶ鶴の姿に、旅先で妻を恋う作者の心が重なっている。
 前歌が潮の引いた時の鶴を詠んだのに対し、この歌は潮の満ちる時の鶴を詠み、干満の対照によって二首が組み合わされている。本巻の第千百九十八首も、鶴が妻を呼ぶ様を詠んでいる。作者は未詳である。

 初句「夕なぎに」は、夕方の海が静まった時に、の意である。
 二句「あさりする鶴」は、餌をあさる鶴、の意である。
 三句「潮満てば」は、潮が満ちると、の意。前歌の初句「潮干れば」と対になる。
 四句「沖波高み」は、沖の波が高いので、の意のミ語法である。
 結句「己妻呼ばふ」は、自分の妻を呼び続ける、の意。「呼ばふ」は繰り返し呼ぶ意で、第千百九十八首の結句「己妻呼ぶも」と通じる。

あさる:餌を探し求める
ゆふなぎ:夕方、風がやんで海が静まること
出典
万葉集
前の歌
潮干ればともに潟に出で鳴く鶴の 声遠ざかる磯廻すらしも
次の歌
いにしへにありけむ人の求めつつ 衣に摺りけむ真野の榛原