網引する海人とか見らむ飽の浦の
清き荒磯を見に来し我れを
- 歌の意味
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網を引く漁師とでも人は見ているだろうか。飽の浦の清らかな荒磯を見に来た私を。
- 鑑賞
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巻第七 雑歌 1187
詞書は前の歌に続き「羈旅にて作る」
飽の浦の清らかな荒磯を見に来ただけなのに、土地の人は自分を網を引く海人と見ているだろうかと詠む一首である。風景を愛でに来た旅人が、海辺の暮らしの中にいる自分の姿を、おかしみをもって眺めている。
左注に「右一首柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ」とあり、柿本人麻呂歌集所出の歌である。結句「見に来し我れを」は本巻の第千百七首と同じで、本巻の第千二百四首、第千二百三十四首にも、海人と見られるかと詠む同じ趣向が見える。飽の浦は紀伊の地名とする説がある。
初句「網引する」は、網を引いて漁をする、の意である。
二句「海人とか見らむ」は、海人と人は見ているだろうか、の意。係助詞「か」を受けて連体形「らむ」で結ぶ二句切れで、第千二百四首、第千二百三十四首と同じ趣向である。
三句「飽の浦の」は地名で、紀伊の地名とする説がある。字余りの句である。
四句「清き荒磯を」は、清らかな荒磯を、の意である。
結句「見に来し我れを」は、見に来た私を、の意。第千百七首と同じ結句である。
あびき:網を引いて魚を捕ること
ありそ:岩の多い荒々しい海岸
- 出典
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万葉集
- 前の歌
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あさりする海人娘子らが袖通り 濡れにし衣干せど乾かず
- 次の歌
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山越えて遠津の浜の岩つつじ 我が来るまでにふふみてあり待て