古典和歌stream

天霧らひひかた吹くらし水茎の
岡の港に波立ちわたる

歌の意味
空一面が曇って、日方の風が吹いているらしい。岡の港に波が一面に立っている。
鑑賞
巻第七 雑歌 1231

詞書は前の歌に続き「羈旅にて作る」
 空一面が曇り、日方の風が吹いているらしく、岡の港一帯に波が立ちわたっていると詠む一首である。空と海の変化をとらえた、荒天の兆しを感じさせる叙景歌である。
 古集に出る歌とされる。岡の港は筑前の遠賀川河口の港とされ、前歌の鐘の岬と同じく筑前の地である。作者は未詳である。

 初句「天霧らひ」は、空一面が曇って、の意である。
 二句「ひかた吹くらし」の「ひかた」は、東南から吹く風とも西南の風ともいわれる。吹いているらしい、の意で、二句切れとなる。
 三句「水茎の」は、「岡」にかかる枕詞である。
 四句「岡の港に」は、筑前の岡の港に、の意である。
 結句「波立ちわたる」は、波が一面に立つ、の意。本巻の第千八十八首の結句「雲立ちわたる」と同じ型である。

ひかた:日の方から吹く風、東南または西南の風とされる
あまぎらふ:空一面が曇る
出典
万葉集
前の歌
ちはやぶる鐘の岬を過ぎぬとも 我れは忘れじ志賀の皇神
次の歌
大海の波は畏ししかれども 神を斎ひて舟出せばいかに