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妹がため菅の実摘みに行きし我れ
山道に惑ひこの日暮らしつ

歌の意味
妻のために菅の実を摘みに出かけた私は、山道に迷って、この一日を過ごしてしまった。
鑑賞
巻第七 雑歌 1250

詞書は前の歌に続き「羈旅にて作る」
 妻のために菅の実を摘みに行ったものの、山道に迷って一日を過ごしてしまったと詠む一首である。妻を思う心から出かけた先での失敗を、ほほえましく詠んでいる。
 左注「右の四首は柿本朝臣人麻呂の歌集に出づ」はこの歌に付されており、柿本人麻呂歌集所出の四首の最後の歌である。前歌が女性の立場の歌であるのに対し、この歌は男性の立場の歌で、二首が問答のように対応している。結句「この日暮らしつ」は本巻の第千二百二十首と同じである。

 初句「妹がため」は、妻のために、の意で、前歌の初句「君がため」と対応する。
 二句「菅の実摘みに」は、菅の実を摘みに、の意である。
 三句「行きし我れ」は、出かけた私は、の意である。
 四句「山道に惑ひ」は、山道に迷って、の意である。
 結句「この日暮らしつ」は、この一日を過ごしてしまった、の意。第千二百二十首と同じ結句である。

すげ:カヤツリグサ科の草、スゲ
出典
万葉集
前の歌
君がため浮沼の池の菱摘むと 我が染めし袖濡れにけるかも
次の歌
佐保川に鳴くなる千鳥何しかも 川原を偲ひいや川上る