佐保川に鳴くなる千鳥何しかも
川原を偲ひいや川上る
- 歌の意味
-
佐保川で鳴いている千鳥よ、どうしてそんなに川原を慕って、ますます川をさかのぼってゆくのか。
- 鑑賞
-
巻第七 雑歌 1251
詞書「問答」
佐保川で鳴く千鳥に、なぜ川原を慕ってますます上流へさかのぼるのかと問いかける一首である。千鳥に託して、ある女性のもとへしきりに通う男に問いかける寓意の歌と見られている。
詞書「問答」のもとの最初の歌で、次歌が千鳥の答えとなっている。左注に「右の二首は鳥を詠む」とあり、また「右の十七首は古歌集に出づ」とあって、この歌から十七首が古歌集所出の歌である。佐保川の千鳥は本巻の第千百二十三首、第千百二十四首にも詠まれている。作者は未詳である。
初句「佐保川に」は、平城京の北東を流れる佐保川で、の意。本巻の第千百二十四首と同じ初句である。
二句「鳴くなる千鳥」の「なる」は音による推定で、鳴いているらしい千鳥、の意である。
三句「何しかも」は、どうして、の意で、疑問を強めている。
四句「川原を偲ひ」は、川原を慕って、の意である。
結句「いや川上る」は、ますます川をさかのぼる、の意。三句の疑問を受けて、その理由を問う。
しのふ:慕う、思い慕う
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
妹がため菅の実摘みに行きし我れ 山道に惑ひこの日暮らしつ
- 次の歌
-
人こそばおほにも言はめ我がここだ 偲ふ川原を標結ふなゆめ