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人こそばおほにも言はめ我がここだ
偲ふ川原を標結ふなゆめ

歌の意味
人はいいかげんに言うかもしれないが、私がこれほど慕っている川原に、決して標縄を張って囲わないでくれ。
鑑賞
巻第七 雑歌 1252

詞書は前の歌に続き「問答」
 前歌の問いに千鳥が答える形の一首で、人はいいかげんなことを言うだろうが、自分がこれほど慕う川原に決して標を結って独り占めしないでくれと願う。千鳥に託して、慕う女性を他の男に取られたくないという思いを表したものと見られる。
 前歌と一組の問答をなし、前歌の「川原を偲ひ」を受けて「偲ふ川原を」と答えている。左注に「右の二首は鳥を詠む」とある。古歌集に出る歌である。作者は未詳である。

 初句「人こそば」は、人こそは、の意。係助詞「こそ」は二句の已然形「め」と呼応する。
 二句「おほにも言はめ」は、いいかげんに言うだろうが、の意。「こそ〜め」の係り結びで逆接の意を含み、二句切れとなる。
 三句「我がここだ」は、私がこれほどまでに、の意である。
 四句「偲ふ川原を」は、慕う川原を、の意。前歌の四句「川原を偲ひ」を受けている。
 結句「標結ふなゆめ」は、決して標を結うな、の意。「標結ふ」は、縄を張って自分の領分とすることで、恋の独占を表す。

しめゆふ:縄を張って自分のものであることを示す
おほに:いいかげんに、おおざっぱに
出典
万葉集
前の歌
佐保川に鳴くなる千鳥何しかも 川原を偲ひいや川上る
次の歌
楽浪の志賀津の海人は我れなしに 潜きはなせそ波立たずとも