大海をさもらふ港事しあらば
いづへゆ君は我を率しのがむ
- 歌の意味
-
大海の様子をうかがって船が待つ港で、もし何か事が起きたら、どこを通ってあなたは私を連れて難を逃れるのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第七 譬喩歌 1308
詞書「海に寄す」
大海の様子をうかがって船が待つ港で、事が起きたなら、あなたはどこを通って私を連れて逃れてくれるのかと問う一首である。港で荒れる海をうかがうさまに人目を忍ぶ恋を譬え、二人の仲が露顕するなどの事態になったとき、相手が自分を守り通してくれるのかを案じる女性の心を表したものと見られる。
詞書「海に寄す」のもとの最初の歌で、ここから三首が海に寄せる歌である。次歌の第千三百九首も荒れる海を詠み、二首は海の荒れを恋の障害に重ねる趣向を共有している。左注により柿本人麻呂歌集所出の歌である。
初句「大海を」は、大海の様子を、の意である。
二句「さもらふ港」は、様子をうかがって船が待機する港、の意である。
三句「事しあらば」は、もし事が起きたならば、の意で、「し」は強意である。
四句「いづへゆ君は」は、どこを通ってあなたは、の意である。
結句「我を率しのがむ」は、私を連れて難を逃れるのだろうか、の意で、四句の疑問を受けている。
さもらふ:様子をうかがって時機を待つ
みなと:川口や入り江の船の泊まる所
ゐしのぐ:連れて困難を切り抜ける
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
この川ゆ舟は行くべくありといへど 渡り瀬ごとに守る人のありて
- 次の歌
-
風吹きて海は荒るとも明日と言はば 久しくあるべし君がまにまに