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紅の深染めの衣下に着て
上に取り着ば言なさむかも

歌の意味
紅の濃く染めた衣を下に着ていて、それを上に取って着たならば、人が噂を立てるだろうか。
鑑賞
巻第七 譬喩歌 1313

詞書は前の歌に続き「衣に寄す」
 紅に濃く染めた衣を下に着ているが、それを上に着たら人が噂を立てるだろうかと案じる一首である。紅の深染めの衣に深く思う女性を、下に着ることに秘めた恋を、上に着ることに恋を人前にあらわすことを譬え、人の噂を恐れる心を表したものと見られる。
 衣に寄せる一連の三首目である。前歌の第千三百十二首と「下に着て」を共有し、前歌が下の衣を上に着ることを決意の証としたのに対し、この歌は噂を恐れている。紅の衣を着て人に知られることを恐れる趣向は、本巻の第千二百九十七首と共通する。作者は未詳である。

 初句「紅の」は、紅色の、の意。本巻の第千二百九十七首の初句「紅に」と対応する。
 二句「深染めの衣」は、濃く染めた衣、の意で、深く思う相手を譬えている。
 三句「下に着て」は、下着として着て、の意で、前歌の三句と同じ句である。
 四句「上に取り着ば」は、上に取って着たならば、の意で、三句の「下」と対をなしている。
 結句「言なさむかも」は、人が噂を立てるだろうか、の意。「かも」は疑問に詠嘆を添える。

こぞめ:色を濃く染めること
くれなゐ:ベニバナで染めた鮮やかな赤色
出典
万葉集
前の歌
おほろかに我れし思はば下に着て なれにし衣を取りて着めやも
次の歌
橡の解き洗ひ衣のあやしくも ことに着欲しきこの夕かも