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冬こもり春の大野を焼く人は
焼き足らねかも我が心焼く

歌の意味
春の広い野を焼く人は、野を焼くだけでは焼き足りないのだろうか、私の心まで焼くことだ。
鑑賞
巻第七 譬喩歌 1336

詞書「草に寄す」
 春の野焼きをする人は、野を焼くだけでは足りないのか、私の心まで焼くと詠む一首である。野の草を焼く火に、身を焦がす恋の思いを重ねており、野焼きの火を恋の炎に譬えている。
 譬喩歌の部で詞書「草に寄す」のもとに置かれた最初の歌で、ここから第千三百五十二首までが草に寄せる歌である。二句と結句に「焼く」を重ね、野を焼くことから心を焼くことへと転じる構成に工夫がある。作者は未詳である。

 初句「冬こもり」は、冬の間こもっていたものが芽吹く意から、「春」にかかる枕詞である。
 二句「春の大野を」は、春の広々とした野を、の意である。
 三句「焼く人は」は、野焼きをする人は、の意。春に枯れ草を焼いて新しい草の生育を促す野焼きをいう。
 四句「焼き足らねかも」は、已然形「足らね」に「かも」が付いた疑問で、焼き足りないからだろうか、の意。四句切れとなる。
 結句「我が心焼く」は、私の心を焼く、の意。二句の「焼く人」と同じ語を重ね、野焼きの火を恋に焦がれる心へと転じている。

おほの:広々とした野原
のやき:春に枯れ草を焼いて新しい草の生育を促すこと
出典
万葉集
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