紫の糸をぞ我が搓るあしひきの
山橘を貫かむと思ひて
- 歌の意味
-
紫の糸を私は搓っている。山橘の実を糸に通そうと思って。
- 鑑賞
-
巻第七 譬喩歌 1340
詞書は前の歌に続き「草に寄す」
山橘の赤い実を糸に通そうと思って、紫の糸を搓っていると詠む一首である。山橘を恋しい女性に、実を糸に貫くことを自分のものとすることに譬え、その人と結ばれるための心づもりを表している。
草に寄せる歌の一首である。「〜ぞ」で二句に切り、結句を「〜と思ひて」と倒置で結ぶ形は、本巻の第千二百五十五首「月草に衣ぞ染むる君がため斑の衣摺らむと思ひて」と同じである。作者は未詳である。
初句「紫の」は、紫色の、の意である。
二句「糸をぞ我が搓る」は、糸を私は搓っている、の意。係助詞「ぞ」を受けて連体形「搓る」で結ぶ係り結びで、二句切れとなる。
三句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。
四句「山橘を」は、山橘の実を、の意。山橘は藪柑子のことで、冬に赤い実をつける。
結句「貫かむと思ひて」は、糸に通そうと思って、の意。倒置で糸を搓る目的を示し、本巻の第千二百五十五首の結句「摺らむと思ひて」と同じ形である。
よる:糸をねじり合わせる
やまたちばな:藪柑子。冬に赤い実をつける
ぬく:糸を通して連ねる
- 出典
-
万葉集
- 前の歌
-
月草に衣色どり摺らめども うつろふ色と言ふが苦しさ
- 次の歌
-
真玉つく越智の菅原我れ刈らず 人の刈らまく惜しき菅原